自家製有機堆肥「アキラ」なくして当社のアルストロメリアあらず。堆肥開発者で当社の会長、市ノ羽晧が2005年発表した所見を紹介します。
施設園芸で一番大切なのは、土が悪くなることによって起きる植物の生育障害の発生であろう。露地栽培と違って、自然の雨に当たらないために起こる塩類の集積だ。化学肥料中心の施肥で、収穫量の増加をねらい、よいものをつくるために余分な肥料まで与える。
こうして土の ECが高くなり、作物に大きな影響を与えることになる。しかも土が硬くなり、微生物のバランスが崩れてしまう。
その結果、土壌病害虫の発生が増え、最後には土の入れ替えをしないと使えないことになってしまう。 そこで私は施設園芸を始めるとき、ハウス内の土壌を長い期間有効に使えるように、有機肥料主体の施肥にしようと考えていた。
最初に購入した有機肥料は未熟のオガクズと樹皮を混合した堆肥で、まだ発酵中のものだった。このままでは未熟堆肥による障害が心配になる。そこで、自分で気に入った堆肥をつくろうと考えた。
知り合いの製材屋さんに相談したところ、『製材をしているところの樹皮は、粉砕して家畜の敷料として業者に売っているからだめだが、貯木場の乗せ降ろしの時にむけた皮は、金を出して山に捨てているので、それでよければ使ってもいいよ』といわれ、早速もらうことにした。
ダンプカーとバックホーを持って行ってみると、半分くらい発酵の進んだ樹皮が山のように捨ててある。当面この材料を使って堆肥づくりをした。
堆肥づくりの基本は、自然界を見ればわかる。山の木は化学肥料をやらなくても大きな木になる。毎年春になると新しい芽を出し、太陽の光を受けて同化作用をし、土壌から肥料を吸収しながら花を咲かせたり実を結び大きくなっていく。秋になれば葉が老化して、紅葉して落ち葉となって土壌中の微生物などにより分解され、肥料となって植物に吸収される。この繰り返しにより大きな木になる。
しかし、それには長い年月がかかる。有機栽培の農業はこのことをいかに短縮し、濃縮するかである。そのためには次の三点がポイントになる。
(1)短縮するためには微生物の強力な活性が必要だから、たくさんの微生物がいる。
(2)濃縮するには植物の生長に必要な栄養となる有機物を多用する。
(3)微生物が増加しやすいように適度な水分と酸素などの供給が必要になる。
樹皮が入手できることになったちょうど同じ頃、樹皮の分解に必要な微生物と微生物活性に必要な栄養としての糖化粕が手に入った。 今使っている微生物は、バックス((株)素望・東京都港区六本木7-11-12 TEL03-3479-4985)といって1g中に1000億という単位のレベルで休眠状態の菌が入っている、超高密度の微生物群だ。この微生物と糖化粕を使うと50~60度の熱で発酵が進み、短期間に分解され、堆肥として使用することが出来るようになる。 おおむね樹皮1~2tに対し、糖化粕100kgにバックス2~3kg、水分は樹皮の含有率により加減している。 こうしてできた堆肥がph4の強酸性堆肥だ。
この地帯の水源は、山全体が石灰岩層のため常にアルカリの強い水が流れている。そのためアルカリの強い土壌が多い。その上、花をつくっているところは以前は全部水田で、アルカリ性の肥料を毎年多用してきた。酸性土壌を中和することはたやすいが、アルカリ土壌を酸性土壌にするのは非常に難しい。この点、酸性堆肥は使える。とくに酸性土壌を好むリンドウには都合がよい。
その他、この堆肥の特徴は、堆肥材料の樹皮が原形をとどめているため、土壌に施した場合に団粒構造になりやすい。通気性、通水性と保肥性に優れており、植物の根張りがよくなる。また樹皮の形が 1~2年では崩れることがなく、毎年施用することにより微生物の棲みよい土層が形成される。
また、超高密度の微生物群を添加しているので、堆肥は微生物のかたまりになっている。そのため、今まで片寄っていた微生物のバランスがよくなり、活発に活動するようになる。
我が家の花づくりは次のとおり。
施設 アルストロメリア 40a |
露地 草花 30a |
露地 リンドウ 140a |
この堆肥は、材料の関係もあって当初自分だけで使うために作っていたが、3年ほど前に友人に分けてあげた。野菜と庭の花や植木類に施したところ、いままでとは違って非常に生育がよく、野菜がおいしいと大変喜ばれた。それを見たとなりの人が買いに来るようになり、今では新聞などに掲載されたこともあって、地区内はもちろん県外からも買いに来たり、宅配の注文もくるようになった。使った人は次のような感想を話してくれた。